最低気象条件とは
最低気象条件(ミニマム/Minimum) とは、航空機が特定の操作を合法かつ安全に実施できる雲の最低高度または視程条件のことです。これは航空法に基づいて定められており、パイロットはこの条件を満たさなければ、離陸や着陸、計器進入などを実施することができません。
最低気象条件は主に以下の3つに分類されます:
- テイクオフ・ミニマ(Takeoff Minima):離陸時の最低気象条件
- ランディング・ミニマ(Landing Minima):着陸時の最低気象条件
- オルタネート・ミニマ(Alternate Minima):代替空港の最低気象条件
これらの条件は、AIP(Aeronautical Information Publication:航空路誌)に公示されており、各空港や進入方式ごとに詳細に定められています。
今回は着陸の最低気象条件について取り扱っていきます。
着陸したい時に天気が悪すぎるといくら計器飛行といえど地上に近くなるから危険ってことですね。
危険であるということは確認すべきことがたくさんあります。
着陸の最低気象条件
離陸の時とは異なり、着陸方式ごとに最低気象条件が定められています。ILSを使う精密進入の方がLOCだけの非精密進入より気象状態が悪くても比較的安全に進入できるためです。
着陸の最低気象条件は三つの要素でできています。
① 進入限界高度(Decision Altitude/Height または Minimum Descent Altitude/Height)
| 用語 | 略称 | 意味 | 適用される進入方式 |
|---|---|---|---|
| Decision Altitude | DA | 決心高度(海抜高度) | 精密進入(ILS等) |
| Decision Height | DH | 決心高(滑走路末端または接地帯標高からの高さ) | 精密進入(ILS等) |
| Minimum Descent Altitude | MDA | 最低降下高度(海抜高度) | 非精密進入 |
| Minimum Descent Height | MDH | 最低降下高(滑走路末端標高からの高さ) | 非精密進入・周回進入 |
② 視程条件(Visibility Requirements)
- RVR(Runway Visual Range / 滑走路視距離): 精密進入・非精密進入の直線進入で使用
- CMV(Converted Meteorological Visibility / 地上視程換算値): RVRが利用できない場合のみ使用
- 地上視程(VIS): 周回進入で使用
③ 視認目標(Visual Reference)
進入限界高度において視認・識別が必要な地上の物標(後述)
以上の三つを確認して基準値以上、視認目標を視認できたらその気象状態で計器進入を行うことができます。
実際のチャートを確認しながら一つづつ確認していきましょう。
福島空港のILS RWY01のチャートになります。

下の表の部分が最低気象条件になる。
航空機カテゴリーAでこれから話を進めていきます。
CAT1ではDAが1200ft、対地からのDHは200ftです。
→雲の高さがこれ未満ならダメです。
視程においては550mになっているため、通報されるRVRもしくはCMVがこれ未満なら同様に気象条件を満たしていないことになります。
ここでCMVについて説明します。
CMVとは
RVRが通報されていない、または利用できない場合に、地上視程(VIS)を換算してRVR相当の値として使用する値です。
天候がよくRVRが通報されていない場合はCMVを利用します。
CMVの換算方法
換算係数は、灯火の運用状況と昼間・夜間によって異なります。
| 灯火の運用状況 | 昼間 | 夜間 |
|---|---|---|
| 進入灯 + 滑走路灯 運用中 | 地上視程 × 1.5 | 地上視程 × 2.0 |
| 滑走路灯のみ 運用中 | 地上視程 × 1.0 | 地上視程 × 1.5 |
| 灯火なし または その他 | 地上視程 × 1.0 | 適用不可 |
灯火が進入灯+滑走路灯がしっかり運用している時の夜間の福島空港で考えていきましょう。
- 地上視程通報値 = 1,200m
- CMV = 1,200m × 2.0 = 2,400m
- この場合、RVR 2,400m相当として扱います。

表を見るとCIRCLINGアプローチの部分の視程がVISとなっていてCMVが記載されていません。
ということでCMVが適用されない場合がありますのでしっかり覚えましょう。
CMV換算が適用されない場合
以下の場合はCMV換算を使用できません(地上視程をそのまま使用):
- 離陸時
- CAT II / III 精密進入
- 周回進入(Circling Approach)
- 代替飛行場(Alternate Airport)として選定する場合
視認目標(Visual Reference)とは
通報されているMETARでは最低気象条件を満たしていたとしても、実際には変化していたり、滑走路が見えない可能性があります。しっかり安全に着陸できるかの判断をするのがこの視認目標です。
この視認物標を確認する位置が進入限界高度であるDA/DH または MDA/MDHになります。
DA/DH または MDA/MDH において、着陸を継続するために視認・識別が必要な地上の物標が視認物標になります。
航空法施行規則189条3項
計器飛行方式により着陸しようとする場合(操縦者が乗り組まないで飛行することができる装置を有する航空機が着陸しようとする場合であつて、当該航空機の着陸の安全が確保され、かつ、他の航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがないと国土交通大臣が認めるときを除く。)であつて次に掲げるときは、着陸のための進入を継続しないこと。
イ 進入限界高度よりも高い高度の特定の地点を通過する時点において空港等における気象状態が当該空港等への着陸のための進入を継続することができる最低の気象条件未満であるとき。
ロ 進入限界高度以下の高度において目視物標を引き続き視認かつ識別することによる当該航空機の位置の確認ができなくなつたとき。
以上に書いてあるようにDA、MDA以下に効果するには適切な目視物標を引き続き視認、識別することで航空機の位置を確認できることが条件になります。
もし目視物標を視認できなくなり識別することができなくなり位置の確認ができなくなったときはすぐに進入復行することになります。
継続的に目視物標を視認・識別できなければ進入を継続できません。
非精密進入・ILS CAT I・PAR進入で必要な視認目標
以下のうち少なくとも1つを視認・識別する必要があります:
- 進入灯(ALS)の一部
- 滑走路進入端
- 滑走路進入端標識
- 滑走路末端灯(RTHL)
- 滑走路末端識別灯(RWYTIL)
- 進入角指示灯(PAPI / VASI)
- 接地帯または接地帯標識
- 接地帯灯(RTZL)
- 滑走路灯(Runway Edge Light)
- 進入灯と同時運用されている直線進入用進入路指示灯(RAI)
- 指示標識
着陸継続の可否判断のタイミング
ここまでは着陸継続できるかの判断を勉強してきました。
ではその判断をいつ行うのかが次に大事になってきます。
早すぎたら天候は常に変化していくため、着陸時にはその判断が誤っている可能性があります。
3箇所で着陸継続の可否判断を行います。
- 進入開始前(IAF)通過前
- 進入限界同度以上の特定の地点
- 進入限界点
① 進入開始前IAF(Initial Approach Fix / 初期進入フィックス)通過前
- 進入開始の可否を判断
- 気象状態が最低気象条件を下回っている場合は進入を開始しない
進入開始不可→待機or代替空港へ向かう
② 進入限界高度以上の特定の地点
進入限界高度以上の特定の地点とは以下の四つのいずれかになります。
- FAF
- OM(Outer Marker / アウターマーカー)(日本にはない)
- AGL 1000 ft(飛行場標高から1000フィート)
- その他特に認められた地点
その地点において、気象が最低気象条件を超えていることを確認して進入を継続します。
- 気象状態が最低気象条件未満の場合、進入を継続してはならない
- FAFが存在する進入方式ではFAFでの判断が優先
- FAFが無い場合はOMまたはAGL 1000 ftで判断
③ 進入限界点
最後に進入限界高度DA/MDA以下に降りれるかを判断します。
それが先ほど説明した目視物標です。
- 進入灯(ALS)の一部
- 滑走路進入端
- 滑走路進入端標識
- 滑走路末端灯(RTHL)
- 滑走路末端識別灯(RWYTIL)
- 進入角指示灯(PAPI / VASI)
- 接地帯または接地帯標識
- 接地帯灯(RTZL)
- 滑走路灯(Runway Edge Light)
- 進入灯と同時運用されている直線進入用進入路指示灯(RAI)
- 指示標識
精密進入(DA/DH)の場合:
- 決心高に到達した時点で、適切な視認目標を視認・識別できている場合のみ着陸継続可能
- 視認できない場合は即座に復行(Missed Approach)
非精密進入(MDA/MDH)の場合:
- 最低降下高以下への降下は、視認目標を継続的に視認・識別できる場合のみ許可
- MDA/MDHで水平飛行を維持しながら視認目標を探す
- 視認した時に、安全に着陸できるパスを維持できないなら復行すべき。
Landing minimaの値が変わる可能性
チャートに記載されているlanding minimaの値が変わる可能性があります。
それが滑走路の灯火の運用状況になります。
アプローチチャートに記載されている最低気象条件はその滑走路の灯火が運用されている場合のものです。
→CAT1、非精密、垂直方向ガイダンス付き進入では灯火の運用状況でMINIMAが変更になります。
→その空港のNOTAMを見て、自分で変更することが必要になります。
その滑走路に備わっている進入灯の長さによってフル、インターミディエット、ベーシック、進入灯などなしの四つのカテゴリーに分類されます。(灯火のカテゴリーについては次の記事でまとめます。)
CAT1の最低気象条件の灯火による変化
CAT1はDH、進入灯の長さ、RTZL(接地帯灯)、RCLL(滑走路中心線灯)の運用状態で視程条件が決まります。

航空灯火のカテゴリーがフルでDHが200ftの時、RCLL(滑走路中心線灯)が使えないと、使えるときはRVRが550mだったのが750mになり、必要な視程条件がキツくなりました。
非精密進入の最低気象条件の灯火による変化
非精密進入はCAT1とは異なり、MDHと進入灯の長さ、航空機区分で視程条件が決まります。


よくある質問
Q: FAF通過後に気象が悪化した場合は?
A: FAF通過後、気象状態が最低気象条件を下回っても、DA/DH または MDA/MDH までは進入を継続できます。ただし、進入限界高度で視認目標を確認できない場合は復行しなければなりません。


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