最低気象条件とは
最低気象条件(ミニマム/Minimum) とは、航空機が特定の操作を合法かつ安全に実施できる雲の最低高度または視程条件のことです。これは航空法に基づいて定められており、パイロットはこの条件を満たさなければ、離陸や着陸、計器進入などを実施することができません。
最低気象条件は主に以下の3つに分類されます:
- テイクオフ・ミニマ(Takeoff Minima):離陸時の最低気象条件
- ランディング・ミニマ(Landing Minima):着陸時の最低気象条件
- オルタネート・ミニマ(Alternate Minima):代替空港の最低気象条件
これらの条件は、AIP(Aeronautical Information Publication:航空路誌)に公示されており、各空港や進入方式ごとに詳細に定められています。
今回は離陸の最低気象条件について取り扱っていきます。
離陸の最低気象条件について(Take off MINIMA)
航空機が安全に離陸を開始できる最低の気象条件のことです。この条件を満たさない場合、航空機は離陸することができません。
VFRはもちろんですがIFRでも離陸することができないということです。
航空法施行規則 189条 2項
計器飛行方式により離陸しようとする場合(操縦者が乗り組まないで飛行することができる装置を有する航空機が離陸しようとする場合であつて、当該航空機の離陸の安全が確保され、かつ、他の航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがないと国土交通大臣が認めるときを除く。)であつて空港等における気象状態が離陸することができる最低の気象条件未満であるときは、離陸しないこと。
また各空港のテイクオフ・ミニマはAIPに記載されているので確認しましょう。
以下のチャートは福島空港のtake off minimaです。
一緒に確認していきましょう。

表を見ると左側にmulti engine ACFT with TKOF ALTN AP filedとotherの二つがあります。
multi engine ACFT with TKOF ALTN AP filedとは多発機で離陸代替空港を飛行計画に設定した場合という意味になり、離陸の代替空港を設定していない場合よりも悪い気象状態で離陸することが可能になります。
離陸の代替空港とは
離陸した後に何らかのトラブルですぐに着陸しなくてはいけない場合に必要になったとします。
離陸した空港がTake off minimaは満たしていても、Landing minimaを満たしていない気象条件であったときに他の空港に着陸することになります。
その空港を離陸の代替空港といいます。
離陸の代替空港を設定できる範囲は
| 双発機(2発) | 出発地から1エンジン不作動の巡航速度で1時間以内 |
| 3発以上 | 出発地から1エンジン不作動の巡航速度で2時間以内 |
AIP AD1.1-33
多発機で離陸代替空港を設定すると、離陸最低気象条件が緩和されます。
離陸代替空港を設定することで、万が一出発空港に引き返せない場合でも、代替着陸先が確保されているため、より悪い視程での離陸が安全に実施できると判断されるからです。
また上段はついている灯火が記載されています。
もし滑走路灯(REDL)が壊れている場合は真ん中の段を見ることになります。
福島空港では数値が変わらないために変更はありませんが注意しておいてください。

福島空港ではRWY01にのみRVRが設置されているため、RWY19にはRVRの欄に記載がありません。
- RVRが利用可能な場合:RVRの値を優先
- RVRが欠測の場合:地上視程を適用
またRVRに関しては複数のRVRを使用するか否かは運航者の判断であるが、使用する場合は関連するRVR全てが最低気象条件を満たす必要がある。
飛行方式設定基準と暫定基準
2006年に飛行方式設定基準が定められました。これにより国際標準に沿った内容となり、安全性と運航効率が向上しました。
しかし、すべての空港を一度に新基準に移行することは困難なため、旧基準を「暫定基準」として一部の空港で継続使用されています。
- ほとんどの空港が新基準に移行済み(2026年時点)
- ただし、一部の空港では暫定基準が残っている
- 離陸最低気象条件(テイクオフ・ミニマ)は、新旧基準が混在する唯一の項目
新基準と暫定基準の見分け方

これは伊丹空港のtakeoff minimaです。下の部分のNOTEにSIDs are designed in accordance with provisional standards for FLIGHT PROCEDURE DESIGN.
と記載されています。これがあると旧基準で運用されているということがわかります。
他にも左の行のTKOF ALTN AP FILEDが記載されていると旧基準になります。
新基準ではmulti engine ACFT with TKOF ALTN AP filedと記載されています。
新基準においてのotherのAVBL LDG MINIMAの扱い
ここからは新基準においてのotherのAVBL LDG MINIMAの扱いについて解説していきたいと思います。
otherは先ほども説明した通りに多発機で離陸の代替飛行場を設定した時以外に当てはまります。単発機を操縦している場合には確実にここの欄を見ることになります。

| 進入方式 | 離陸最低条件 | 雲高要件 |
|---|---|---|
| CAT Ⅲ精密進入 | CAT ⅢのRVR | なし |
| CAT Ⅱ精密進入 | CAT ⅡのRVR | なし |
| CAT Ⅰ精密進入 | CAT ⅠのRVR(またはVIS) | なし |
| 非精密進入 | 非精密のRVR/VIS+CEIL | あり |
| 周回進入 | 周回のVIS+CEIL | あり |
飛行方式設定基準ⅴ-1-2-2
となります。その空港で使用している進入方式によって指定要件のみか雲高要件がプラスで必要になってくるかの変化があります。
飛行機のカテゴリーAを想定して例を出していきます。

福島空港RWY01でILS RWY01のCAT1を使用しているときで離陸の代替飛行場を選定しない場合は、視程が550m以上で通報されていれば離陸が可能となります。
もしILS01のglide slope が故障していて、LOCを使用していた場合は視程が900m以上かつ雲高が1560ft以上である必要があります。

福島空港RWY19でVOR RWY19を使用している時で離陸の代替飛行場を選定しない場合は、視程が1200m以上かつ雲高が1550ft以上である必要があります。
上記の例を見て分かる通り多発機において離陸の代替飛行場を設定した場合は視程が400m以上で出発できるため、条件が緩和されていることがわかります。

暫定基準においてのotherのAVBL LDG MINIMAの扱い
一方で暫定基準においてはいずれの進入方式において視程要件と雲高要件どちらとも満たす必要があります。
暫定基準では、精密進入であっても雲高の条件が必要です。
暫定基準P57より
利用できる進入方式の決心高度又は最低効果高度に相当する雲高、及び飛行視程に相当する地上視程とする。
よくある疑問
Q1: 単発機でも離陸代替空港を設定できる?
A: 設定できますが、テイクオフ・ミニマは緩和されません。
- 単発機は、エンジン故障時に滑空して着陸するしかないため、多発機のような優遇措置はありません。
Q2: 目的地が近い場合はどうなる?
A: 目的地または目的地代替空港が、離陸代替空港の範囲内(双発で1時間以内)にある場合、別途離陸代替空港を設定する必要はありません。
例:
- 羽田→成田の短距離便
- 成田が目的地代替空港として設定されている
- 成田は羽田から片発1時間以内
- → 離陸代替空港は不要
Q3: 離陸代替空港を設定したら必ず使わないといけない?
A: いいえ。離陸代替空港は緊急時の選択肢です。
- 出発空港に引き返せる場合は、出発空港へ戻る
- 出発空港に引き返せない場合に、離陸代替空港へ向かう
Q4: 飛行中に離陸代替空港の天候が悪化したら?
A: 離陸代替空港が必要なのは離陸時の判断のためです。
- 離陸後に天候が悪化しても、離陸の正当性には影響しません
- ただし、実際に緊急事態が発生した場合は、その時点で最も適切な空港を選択します



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