何のために出発前確認をするのか
航空法第73条の2「機長は航空機が航行に支障がないこと、その他運航に必要な準備が整っていることを確認させた後でなければ出発させてはならない」とあるため。
普通に考えて飛行機や気象など様々な要因を考えて、安全に運航することができるかを判断するために出発前の確認を行います。
何を確認するのか
航空法施行規則164条の15「機長が確認しなければならない事項は、次に掲げるものとする。」
- 当該航空機及びこれに装備すべきものの整備状況
- 離陸重量、着陸重量、重心位置及び重量分布
- 航空情報
- 気象情報
- 燃料及び滑油の搭載量並びにそれらの品質
- 積載物の安全性
当該航空機およびこれに装備すべきものの整備状況とは
航空機の整備状況
航空機の整備状況として以下を確認。
- 機体の整備状況
- 発動機の整備状況
- プロペラの整備状況
- 最近の不具合事項(TCD、SBなど)
前回の点検から何時間使用して、後何時間飛ぶことができるのか。トータルの使用時間が限界使用時間以内に収まっているかどうか。TCD(耐空性改善通報)やSB(service britain)が発出されていないかどうか、されていたらしっかり対応しているのかを確認する。
航空機に装備すべきものの整備状況
航空機に装備すべきものの整備状況としては以下の三つを確認
- 航空機の外部点検、発動機(エンジン)の地上試運転
- 航空機に搭載すべき書類の確認
- 救急用具の整備
外部点検は外部点検です。実際の航空機の点検をチェックリストを見ながら行います。発動機の地上試運転は飛ぶ前に行います。
では航空機に搭載すべき書類とはなんなのか
航空法59条「航空機に備え付ける書類」には以下の通りです
- 航空機登録証明書
- 耐空証明書
- 航空日誌
- その他航空の安全のために必要な書類
- 運用限界等指定書
- 飛行規程
- 運航規程
- 無線局免許状
- 航空図
以上の書類を確認します。有効期限以内であるか、自分が使用する用途にその航空機が対応しているか、航空機やエンジンの修理状況は大丈夫なのかなどなどを確認。
救急用具の整備状況
航空法62条に「国土交通省令で定める航空機には、落下傘、救命胴衣、非常信号灯、その他救急用具を装備しなくてはならない」と記載があり、具体的に必要な救急用具は航空法施行規則150条に書いてあります。また救急用具の点検する期間については航空法施行規則151条に記載してあります。
航空機の使用用途や席数、飛行する場所によっても必要な救急用具が変化しますので一旦割愛。
救急用具の点検期間
60日ごとに点検するもの
落下傘
非常信号灯、携帯灯および防水携帯灯
救急箱
180日ごとに点検するもの
救命胴衣、これに相当する救急用具及び救命ボート
非常食糧
12ヶ月ごとに点検するもの
航空機用救命無線機
離陸重量、着陸重量、重心位置及び重量分布とは
飛行機の運航において、重量と重心は飛行性能と安全に直接影響を与えます。
- 離陸と着陸の性能: 重量が重すぎると、離陸に必要な滑走距離が長くなり、もしかしたらその滑走路では飛べないかもしれない。
- 燃費と効率: 重量が軽いとその分だけ必要な燃料が少なくなり燃費がよくなります。
- 安定性と操縦性: 重心位置が適切でないと、飛行機の安定性が損なわれ、操縦が難しくなります。
- 構造的安全性: 飛行機には最大許容重量(MTOW: Maximum Takeoff Weightなど)が定められており、これを超えると機体の構造にダメージを与える可能性があります。
だから確認しなくてはなりません。
飛行規程にはしっかり制限が書かれているのでその値までに抑えるように。
重心位置
飛行機にとって重心位置はとても大切です。飛行機の安全性、操縦性、燃費に直接影響します。
前方重心
安定性上がる
操縦性が悪い
燃費悪化
失速速度増加
失速からリカバリーしやすい
後方重心
安定性下がる
操縦性が良い
燃費良くなる
失速速度減少
失速からリカバリーしにくい
航空情報
航空法99条により「国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより、航空機乗組員に対し、航空機の運航のため必要な情報を提供しなければならない。」とあり、航空情報を国が発行してくれます。
また航空法施行規則209条の2に航空情報の内容について詳しく書いてあります。
具体的には以下のようなものが航空情報にあたります。
1.航空路誌(AIP)
2.航空路誌改訂版(AIP AMENDMENT)
3.航空路誌補足板(AIP SUPPLEMENT)
4.ノータム(NOTAM)及び飛行前情報ブリテン(PIB)
5.航空情報サーキュラー(AIC)
気象情報
出発前確認ですることはそうウェザーブリーフィングです。ウェザーブリーフィングをするために色々な情報を参照します。
どこから気象情報を入手するのか
気象庁の情報
MATARやTAF
フライトお天気
気象情報を見たらどうするのか
まず最初に現在の天気の概略を理解することです。地上天気図を把握したのちに出発地や到着地、経路上の天候を見ます。
その後になぜその天気になっているかを見抜くことが大切です。天気だけでなく風向風速とかもですよ。高層天気図もしっかり活用して何が起きているかを把握しましょう。
そしてその天気が今後どうなっていくを予想していく流れになります。
その予想を元に飛行可能かどうかを判断していきます。自分が飛ぶのがVFRなのかIFRなのかによっても基準は変わっていくのでしっかり判断することが安全につながります。
ウェザーブリーフィングをするにあたって
天気を理解して予想して飛行可能かどうか判断するだけで終わりではありません。
飛行可能であるならば出発地ではどの滑走路から飛んでどのような飛び方をするのか、また到着時に予想される滑走路はあっちだからこういうアプローチ方法をやりたいし、管制からの指示も同じものだと予測できるな。
みたいなことを考えて説明できるようになりましょう。天気を正しく把握してからが運航の本番です。
燃料及び滑油の搭載量並びにそれらの品質
航空機の安全運航を支えるうえで、「燃料」と「滑油」の管理は欠かせません。
単に「入っていれば良い」ものではなく、正しい量・正しい質で搭載されていることが求められます。
燃料の搭載量に関しては航空法63条によって「航空運送事業の用に供する場合又は計器飛行方式により飛行しようとする場合においては、国土交通省令で定める量の燃料を携行しなければ、これを出発させてはならない。」と記載があり、運送事業かIFRで飛行する場合においては搭載しなくてはならない最低量が必要になります。
具体的な燃料の量に関して航空法施行規則の153条に記載があります。
また燃料の種類に関しても確認しなくてはなりませんAVGASといった小型機で使われるものからJET A-1という旅客機で使われるものもあり色がそれぞれ異なります。飛行機ごとに対応した燃料がありますので飛行規程に従い確認する必要があります。
滑油に関しても同様で飛行機ごとに定められている滑油の種類と量をしっかり確認することが重要です。
積載物の安全性
もし積載物に危険なものがあったらどうでしょう。空飛ぶ密室なのでそりゃあ危険なものはないほうがいいです。それをしっかり確認していきましょう。
航空法86条において爆発物等の輸送禁止ということで「爆発性のあるものや易燃性(燃えやすい)ものや他人や他の物件に危害や損傷を与えるもので省令で定めるもの」は航空機で運ぶことができません。
具体的には航空法施行規則194条に記載されています。
- 火薬類
- 高圧ガス
- 引火性液体
- 可燃性物質類
- 酸化性物質類
- 毒物類
- 放射性物質等
- 腐食性物質
- その他の有害物件
- 凶器、鉄砲、刀剣その他人を殺傷するに足るべき物件
航空運送事業においてはもし貨物や手荷物などで機内に持ち込まされそうになった時は持ち込みを拒絶することができる。持ち主がいないなら自らその荷物を省くことができる。
一応告示に従えば危険物は輸送は可能。
また積載物は固縛が必須になる。固縛しないで動いてしまうと、重心位置が変化してしまうためである。重心位置が変化したら飛行特性が変わってしまうしもしかしたら許容されていない重心位置まで行ってしまう可能性があるためである。
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