少しタイムリーな話題に触れてみましょう。たびたびニュースになっているイメージがあるパイロットのアルコール問題。問題が起こった時は、試験でも質問される可能性がかなり高いです。しっかり覚えましょう!
今回はそのアルコールの制限について詳しくみていきましょう。
航空法におけるアルコールの基準
航空法第70条(酒精飲料等)
「航空機乗組員は、酒精飲料又は麻酔剤その他の薬品の影響により航空機の正常な運航ができないおそれがある間は、その航空業務を行つてはならない。」
従来の課題
つまり航空法第70条では具体的な判断基準がない状態で、「正常な運航ができないおそれ」の解釈が曖昧です。
具体的な数値基準
2019年に操縦士の飲酒基準について厳しくなりました。これは2018年におきたロンドンでの機長の飲酒問題が起こったことで新しくできました。ということで具体的な数値が定められました。かなり最近ですね。
国交省資料
血中アルコール濃度
0.2g/ℓ未満
呼気中アルコール濃度
0.09mg/ℓ未満
航空運送事業においては
乗務前後にアルコール検査を実施
飲酒後8時間以内の飛行勤務を禁止
アルコール検査制度
検査方法の詳細
- 検査タイミング:一連の飛行前後(航空機乗組員・客室乗務員)
- 使用機器:アルコール検知器(ストロー式推奨)
- 不正防止:第三者立ち会い原則義務化
- 記録保存:少なくとも1年間(不合格者は退職後1年まで)
アルコール検知器の仕様
- 一定の呼気量をもとにアルコール濃度を測定
- 数値の単位:0.01mg/ℓ以下の精度
- 製造事業者の定めに従い適切に管理・運用
罰則
航空法148条の3
第七十条の規定に違反して、その航空業務に従事した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
過去事例
2025年8月28日(JAL)
ホノルル発中部空港行きの国際便の機長が「飲酒後に乗務」と認められ、出発前に乗務解除されたことで、複数便が最大18時間遅延、約630名に影響。国交省が調査を開始。
2025年2月(JAL)
オーストラリア・メルボルン発機と副操縦士が飲酒し、乗務12時間前の規定違反および飲酒隠蔽が発覚。120日〜210日の業務停止処分を受け、2名とも解雇。
2024年4月(JAL)
ダラスのホテルで機長が泥酔し騒ぎを起こして警察対応 → フライトがキャンセルに。帰国便の欠航となる。
2018年10月(JAL副操縦士・Heathrow)
ロンドン・ヒースロー空港で副操縦士が乗務前に基準の約9倍のアルコール値を検出され逮捕。英国で拘束・処罰。
複数年(JALグループ、ANA含む)
2017年以降、JALでは飲酒トラブルが相次ぎ、ANA(グループ会社)の機長も前日の飲酒で体調不良 → フライト遅延という事例あり。24時間前からの飲酒禁止などの再発防止策を実施。
まとめ
パイロットにとってアルコールは「絶対に切り離さなければならないもの」です。
わずかな量であっても判断力や反応速度、集中力は確実に低下し、飛行の安全を脅かします。
実際に、過去には飲酒によって便の遅延・欠航、さらには重大事故につながった事例もありました。
そのため航空会社や国のルールでは、乗務前の飲酒禁止時間や厳格なアルコール検査が徹底されています。
パイロットは「人命を預かる立場」であり、一瞬の判断が多くの人の命を左右します。
だからこそ、「飲酒は絶対にしない」「基準を守るのは当然」という強い自覚と責任感が求められるのです。
安心して空の旅を楽しんでもらうために、アルコールの影響を考え行動すべきです。
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