はじめに
管制圏は、航空交通の安全を確保するために設定される重要な空域です。航空法に基づいて指定される管制圏では、航空交通管制官による管制業務が実施され、航空機の安全かつ効率的な運航が確保されています。
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管制圏の定義
2.1 航空法第2条第13項による定義
航空法第2条第13項
航空機の離陸及び着陸が頻繁に実施される国土交通大臣が告示で指定する空港等並びにその付近の上空の空域であつて、空港等及びその上空における航空交通の安全のために国土交通大臣が告示で指定するものをいう。
管制業務が行われている空港+その上空の空域で、告示で指定されている空域のことを言います。
告示には管制圏に指定されている、空域が記載されています。
クラスD
日本において管制圏はクラスDとして分類されます。AIP1.4に記載あり。
VFR | IFR | |
管制間隔 | 設定されないが航空情報が提供される | IFR機同士に設定 |
速度制限 | 250kt | 250kt |
管制許可 | 必要 | 必要 |
無線通信要件 | 双方向 | 双方向 |
最低気象条件 | なし | VMC |
管制間隔に関して、SVFR機がいるならば、IFRとSVFRの間にも管制間隔は設定される。
管制圏の範囲
基本的に空港の中心と呼ばれる空港標点から半径9km(5mile)高さが通常の民間空港なら3000ft AGL、自衛隊の空港は6000ft AGLになっています。
MSLは空港の標高ごとに異なるため、確認が必要です。
区分航空図や先ほどの管制圏を指定する告示にも高さが記載されています。
区分航空図には青い点線で囲まれた範囲になります。
装備しなくてはいけないもの
航空法施行規則144条
法第六十条の規定により、管制区、管制圏、情報圏又は民間訓練試験空域を航行する航空機に装備しなければならない装置は、次の各号に掲げる場合に応じ、それぞれ、当該各号に掲げる装置であつて、当該各号に掲げる数量以上のものとする。
一 管制区又は管制圏を航行する場合 いかなるときにおいても航空交通管制機関と連絡することができる無線電話 一(航空運送事業の用に供する最大離陸重量が五千七百キログラムを超える飛行機にあつては、二)
二 管制区又は管制圏のうち、計器飛行方式又は有視界飛行方式の別に国土交通大臣が告示で指定する空域を当該空域の指定に係る飛行の方式により飛行する場合 四千九十六以上の応答符号を有し、かつ、モードAの質問電波又はモード三の質問電波に対して航空機の識別記号を応答する機能及びモードCの質問電波に対して航空機の高度を応答する機能を有する航空交通管制用自動応答装置 一
三 情報圏又は民間訓練試験空域を航行する場合(第二百二条の五第一項第一号又は第二項第一号に該当する場合を除く。) いかなるときにおいても航空交通管制機関又は当該空域における他の航空機の航行に関する情報(以下「航空交通情報」という。)を提供する機関と連絡することができる無線電話 一
管制区を飛行する場合、無線電話は必須。
管制区を飛行する時に、IFRであるならトラポンが必要。
VFRの時は特別管制区を飛行する時にはトラポンが必要。
ちなみにトラポンはIFR機は管制圏、進入管制区、管制区のうち10000ft以上の空域、
VFR機は特別管制区、管制区のうち10000ft以上の空域で必要。
144条の2に記載がある告示はこちらになります。
管制圏での飛行について
航空法95条
航空機は、航空交通管制圏においては、次に掲げる飛行以外の飛行を行つてはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
一 当該航空交通管制圏に係る空港等からの離陸及びこれに引き続く飛行(当該航空交通管制圏外に出た後再び当該航空交通管制圏において行う飛行を除く。)
二 当該航空交通管制圏に係る空港等への着陸及びその着陸のための飛行
管制圏を飛行する時は許可された時以外、その空港からの離陸+離陸後の飛行、着陸前の飛行+着陸することしかできない。
ここではあまり言及しませんが、航空法の91条で述べられているように曲技飛行等ももちろん禁止です。
管制圏での指示について
航空法96条
航空機は、航空交通管制区又は航空交通管制圏においては、国土交通大臣が安全かつ円滑な航空交通の確保を考慮して、離陸若しくは着陸の順序、時機若しくは方法又は飛行の方法について与える指示に従つて航行しなければならない。
2 第二条第十三項の国土交通大臣が指定する空港等の業務に従事する者(国土交通省令で定める空港等の工事に関する業務に従事する者を含む。)は、その業務に関し、国土交通大臣が当該空港等における航空交通の安全のために与える指示に従わなければならない。
3 航空機は、次に掲げる航行を行う場合は、第一項の規定による国土交通大臣の指示を受けるため、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣に連絡した上、これらの航行を行わなければならない。
一 航空交通管制圏に係る空港等からの離陸及び当該航空交通管制圏におけるこれに引き続く上昇飛行
二 航空交通管制圏に係る空港等への着陸及び当該航空交通管制圏におけるその着陸のための降下飛行
三 前二号に掲げる航行以外の航空交通管制圏における航行
四 第一号に掲げる飛行に引き続く上昇飛行又は第二号に掲げる飛行に先行する降下飛行が行われる航空交通管制区のうち国土交通大臣が告示で指定する空域(以下「進入管制区」という。)における計器飛行方式による飛行
五 前号に掲げる飛行以外の航空交通管制区における計器飛行方式による飛行
六 航空交通管制区内の特別管制空域又は第九十四条の二第一項の国土交通省令で定める高さ以上の空域における同項ただし書の許可を受けてする計器飛行方式によらない飛行(国土交通省令で定める飛行を除く。)
4 航空機は、前項各号に掲げる航行を行つている間は、第一項の規定による指示を聴取しなければならない。
5 国土交通大臣は、航空交通管制圏ごとに、前二項の規定による規制が適用される時間を告示で指定することができる。
6 前項の規定により指定された時間以外の時間のうち国土交通大臣が告示で指定する時間において第三項第一号から第三号までに掲げる航行を行う場合については、次条第一項及び第二項(第一号に係る部分に限る。)の規定を準用する。
管制圏内では、管制官からの指示に従うこと。
また、離陸する前、着陸する前、管制圏を飛行する前は連絡すなわちコンタクトしてからではないと航行できない。
管制からの指示をしっかり聴取すること
管制業務の適用時間については施行規則199条の2項による告示より記載があります。
速度制限について
AIP1.4にも記載がありましたが、航空法にも速度制限について記載があります。
航空法82条
航空機は、左に掲げる空域においては、国土交通省令で定める速度をこえる速度で飛行してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
一 航空交通管制圏
二 第九十六条第三項第四号に規定する進入管制区のうち航空交通管制圏に接続する部分の国土交通大臣が告示で指定する空域
管制圏には速度制限があるよということを示しています。具体的な数値は施行規則に記載があります。
航空法施行規則179条
法第八十二条の二の国土交通省令で定める速度は、指示対気速度二百五十ノットとする。
2 前項の規定にかかわらず、自衛隊の使用する航空機であつて同項に規定する速度を超えて飛行することがやむを得ないと認めて国土交通大臣が指定した型式の航空機に係る法第八十二条の二の国土交通省令で定める速度は、国土交通大臣が定める速度とする。ただし、他の航空機の安全に支障を及ぼすおそれがあるときは、この限りでない。
3 前二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる航空機に係る法第八十二条の二の国土交通省令で定める速度は、当該各号に掲げる速度とする。
一 法第九十六条第一項の規定により国土交通大臣から前二項に規定する速度を超える速度で飛行することを指示された航空機 当該指示に係る速度
二 航行の安全上やむを得ないと認められる事由により前二項に規定する速度を超える速度で飛行する必要のある航空機 当該航空機が安全に飛行するために必要と認められる適切な速度
第3項に関しては、IASが250kt以上を指示される、もしくは安全のためにやむを得ない場合は250ktを超えても違反にはならないということです。
管制圏での最低気象条件
管制圏を飛行するにあたってVFR(有視界飛行方式)で飛行できる最低気象条件があります。
航空法施行規則5条より
項目 | VFR | SVFR |
---|---|---|
飛行視程 | 5,000m以上 | 1,500m以上 |
雲からの距離(水平) | 600m以上 | 雲から離れて |
雲からの距離(垂直) | 上方150m以上 下方300m以上 | 雲から離れて |
地表面視認 | - | 継続視認 |
また、管制圏の空港からの離陸、着陸をする時は、別に最低気象条件が定められています。
項目 | VFR |
地上視程 | 5000m以上 |
雲高 | 地表、水面から300m以上 |
情報圏を飛行する場合と最低気象条件は変わらないのでわりかし楽に覚えられるはずです。
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