徹底解説 PCA 特別管制区とは何か 

事業用操縦士

PCA(Positive Control Area:特別管制区)とは、航空交通が非常に混雑している空域において、管制機関から許可を受けた場合を除いて、VFR(有視界飛行方式)による飛行が原則として禁止されている空域のことです。

主に大きな空港の計器進入経路上に設定されており、IFR機の安全な運航を確保するために設けられています。航空機の着陸は基本的に3度のパス角で滑走路に進入するため、空港から離れた地点から段階的に高度を下げていく必要があります。この進入経路上をVFR機が自由に飛行していると、IFR機の安全な運航に支障をきたす可能性があるため、PCAが設定されてます。

航空法でのPCAの記載について

航空法94条の2

航空機は、航空交通管制区若しくは航空交通管制圏のうち国土交通大臣が告示で指定する空域(以下「特別管制空域」という。)又は国土交通省令で定める高さ以上の空域においては、計器飛行方式によらなければ飛行してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

2 国土交通大臣は、特別管制空域ごとに、前項の規定による規制が適用される時間を告示で指定することができる。

特別管制空域について指定する告示はこちら

つまり管制から許可がない限りPCA内ではIFRで飛行しなくてはならない。

→VFR機はPCAの中に入れない

またこのPCAは三つに分類されます。

航空法施行規則198条の4

国土交通大臣は、法第九十四条の二第一項の規定により特別管制空域を告示で指定するに当たつては、次の各号のいずれかに掲げる空域に区分するものとする。

一 特別管制空域A 管制区又は管制圏のうち、航空交通の安全の確保のため有視界飛行方式による飛行を禁止することが最も必要と認められる空域

二 特別管制空域B 管制区又は管制圏のうち、前号の空域と認められる空域以外の航空交通がふくそうすると認められる空域であつて、管制業務(法第九十六条第一項及び第二項の規定による指示並びに同条第三項の規定による連絡に関する業務であつて国土交通大臣が行うものをいう。以下同じ。)を行う機関が当該空域内を飛行するすべての航空機との間に安全な間隔を確保するための指示を行う必要があると認められるもの

三 特別管制空域C 管制区又は管制圏のうち、前二号の空域と認められる空域以外の計器飛行方式により飛行する航空機による航空交通がふくそうすると認められる空域であつて、管制業務を行う機関が当該空域内を計器飛行方式により飛行する航空機との間に安全な間隔を確保するための指示を行う必要があると認められるもの

2 国土交通大臣は、次の各号に掲げる空域においては、それぞれ当該各号に定める場合に限り、法第九十四条の二第一項ただし書の規定による許可をするものとする。

一 前項第一号に掲げる空域 予測することができない急激な天候の悪化その他のやむを得ない事由がある場合

二 前項第二号に掲げる空域 予測することができない急激な天候の悪化その他のやむを得ない事由がある場合又は当該空域内の計器飛行方式により飛行する航空機の円滑な航行を阻害するおそれがなく、かつ、当該空域内のすべての航空機との間に安全な間隔を確保することが可能であると国土交通大臣が認める場合

三 前項第三号に掲げる空域 予測することができない急激な天候の悪化その他のやむを得ない事由がある場合又は当該空域内の計器飛行方式により飛行する航空機の円滑な航行を阻害するおそれがなく、かつ、当該空域内の計器飛行方式により飛行する航空機との間に安全な間隔を確保することが可能であると国土交通大臣が認める場合

以上のように特別管制空域は三つに分類されており、Aが一番厳しい基準であることがわかります。

ですが先ほどの告示を見ればわかると思いますが、特別管制空域Aに分類されている空域は現在の日本では存在しません

最初に述べた通り特別管制空域はIFRでのみ飛行することができますが、例外でVFRでも飛行することができます。

特別管制空域の分類ごとにVFRで飛行できる条件が異なります。それが上記の施行規則198条の5の2項に記載されています。

次に説明しますが一つを除いて特別管制区はクラスがCのため特別管制空域Cについて詳しく説明すると

天候の悪化もしくは特別管制区内のIFR機同士が安全な間隔を確保できるならVFR機が空域を飛行することが許可されるよっていうことです。

クラスBはその条件が天候の悪化もしくは特別管制区内の全ての航空機(IFR同士の間隔だけでなく、IFR機とVFR機の間隔も)が安全な間隔を確保できるならVFR機が空域を飛行することが許可されるよっていうことです。

特別管制空域の設定場所

現在日本に設定されている特別管制空域は以下のようになっています。(2025年10月)

特別管制空域B

那覇特別管制区

特別管制空域C

  • 三沢第一特別管制区
  • 千歳特別管制区
  • 三沢第二特別管制区
  • 仙台特別管制区
  • 成田特別管制区
  • 東京第一特別管制区
  • 東京第二特別管制区
  • 中部特別管制区
  • 名古屋特別管制区
  • 大阪特別管制区
  • 神戸特別管制区
  • 関西特別管制区
  • 高松特別管制区
  • 福岡特別管制区
  • 宮崎特別管制区
  • 鹿児島特別管制区

那覇以外の特別管制区は全てCに分類されています。

特別管制空域を飛行する際に必要な装備

特別管制空域は管制区、管制圏のうちに告示で指定される空域との定義であるため、管制区、管制圏で必要な装備はもちろん必要です。

つまり航空法施行規則146条です。

航空法施行規則146条 

法第六十条の規定により、管制区、管制圏、情報圏又は民間訓練試験空域を航行する航空機に装備しなければならない装置は、次の各号に掲げる場合に応じ、それぞれ、当該各号に掲げる装置であつて、当該各号に掲げる数量以上のものとする。

 管制区又は管制圏を航行する場合 いかなるときにおいても航空交通管制機関と連絡することができる無線電話 一(航空運送事業の用に供する最大離陸重量が五千七百キログラムを超える飛行機にあつては、二)

 管制区又は管制圏のうち、計器飛行方式又は有視界飛行方式の別に国土交通大臣が告示で指定する空域を当該空域の指定に係る飛行の方式により飛行する場合 四千九十六以上の応答符号を有し、かつ、モードAの質問電波又はモード三の質問電波に対して航空機の識別記号を応答する機能及びモードCの質問電波に対して航空機の高度を応答する機能を有する航空交通管制用自動応答装置 一

2項の部分が特別管制空域内で必要な装備にあたるため、トランスポンダーと無線電話が必要になるということです。

「計器飛行方式又は有視界飛行方式の別に国土交通大臣が告示で指定する空域を当該空域の指定に係る飛行の方式により飛行する場合」と航空法では難しく記載があり、これが特別管制空域のことを指しているのか疑問に思う方もいると思います。

ステップ1:「計器飛行方式又は有視界飛行方式の別に」 → 「IFRかVFRかを区別して」

ステップ2:「国土交通大臣が告示で指定する空域」 → 「国が告示で指定した特定の空域」

ステップ3:「当該空域の指定に係る飛行の方式により飛行する場合」 → 「その空域で指定された飛行方式で飛行する場合」

つまり全体の意味は:

「国土交通大臣が『この空域はIFR用』『この空域はVFR用』と飛行方式を区別して指定した特定の空域において、その指定された飛行方式で飛行する場合」

となります。

特別管制空域はIFR用の空域と指定されている。
→その指定した空域においてIFRで飛行する場合

と読み替えることができる。

だとしたらVFRで特別管制空域を飛行する時はトラポンはいらないのかとなってしまう

結論としてはVFRで飛行する際もトラポンは装備しなくてはならない

法解釈の難しさでもあるが、例外として特別管制空域はVFRで飛行できるとなっているので

特別管制空域はIFR用、VFR用の空域として指定されている。
→その指定した空域においてIFRもしくはVFRで飛行する場合

と解釈できる。

つまりVFRで飛行する場合もトラポンが必要になる。

法律の解釈は難しいので僕のいってることが本当かなVFRでもトラポンが必要なのか疑う場合はAIPにも記載があるためそちらで確認してほしい。

AIP GEN1.5に記載があり、VFR機でも特別管制空域内ではトラポンが必須であることがわかる。

特別管制空域をVFRで飛行するときの条件

今まで述べたとおり特別管制空域は許可があれば例外でVFRで飛行することができます。

VFRで飛行する際の条件が施行規則とAIP ENR1.1-4に記載されています。

航空法施行規則198条の8

航空機は、法第九十四条の二第一項ただし書の規定による許可を受けたときは、有視界気象状態を維持して飛行しなければならない。ただし、附近にある他のすべての航空機の位置を把握することができる装置を用いることその他の方法により当該航空機との間に安全な間隔を確保することが可能であると国土交通大臣が認める場合は、この限りでない。

特段難しい条件ではないですが記載があるのでまとめました。

VFRで飛行したければVMCを維持しろよということですね。当たり前です。

当該空域の管制業務を行う機関と常時連絡を保つこと(AIP ENR1.1-4)

以上2点が特別管制空域をVFRで飛行する条件になります。

一つ前のトピックでも記載したがVFRでもトラポンは必要であることは忘れないように。

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