飛行機と連絡が取れなくなったら何が起きる?「捜索救難の3段階」

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捜索救難の3段階 一問一答 | パイロットガイド
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もし飛行機が予定時刻を過ぎても目的地に到着しなかったら――。パイロットがMAYDAYやPAN PANを宣言しなくても、実はその瞬間から国の捜索救難の仕組みが静かに動き出しています。

本記事では、この「不確実の段階」「警戒の段階」「遭難の段階」という3段階の捜索救難体制について、ICAO国際基準、日本の関連資料、実際の運用フローを踏まえて詳しく解説します。

ICAOの世界共通ルールがベース

日本の捜索救難体制は、ICAO(国際民間航空機関)が定める国際標準に基づいています。ICAO Annex 12(Search and Rescue)では、緊急度の低い順に次の3フェーズが定義されています。

  • INCERFA(Uncertainty phase):航空機と乗員の安全について不確実性がある状態
  • ALERFA(Alert phase):航空機と乗員の安全について懸念が生じている状態
  • DETRESFA(Distress phase):航空機と乗員が重大かつ差し迫った危険に晒されており、直ちに援助が必要と合理的に確信できる状態

日本ではこれを「不確実の段階」「警戒の段階」「遭難の段階」という名称で運用しており、国土交通省東京空港事務所に置かれる救難調整本部(RCC:Rescue Coordination Center)が中心となって対応します。

ELTが発する遭難信号がRCCに届くまでの流れは、ELTについてはこちらの記事COSPAS-SARSATシステムについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、あわせて読むと衛星〜RCC〜捜索部隊までの流れがつながります。

第1段階:不確実の段階

「何かおかしいかもしれない」という、最初のアラームが鳴る段階です。次のようなケースで発動します。

  • 位置通報の予定時刻30分過ぎても通報がない
  • 目的地への到着予定時刻から30分(ジェット機は15分)過ぎても到着しない、かつ連絡が取れない
  • ELT(航空機用救命無線機)からの信号を受信した
  • 航空機が「困難な状態」(ロスポジ、ロスコム)にある

この段階になると、予定していた飛行経路上の飛行場に問い合わせを行う「第一段通信捜索」が始まり、RCCと運航者へ連絡が入ります。まだ大規模な捜索活動には発展しませんが、静かに確認作業がスタートするイメージです。

第一段通信捜索とは 不確実の段階に入った際に最初に行われる、電話やATCの通信網を使った確認作業です。飛行方式によって捜索する対象が異なります。

  • VFR(有視界飛行方式)の場合:予定していた飛行経路上にある飛行場に、当該機の着陸状況などを問い合わせる
  • IFR(計器飛行方式)の場合:予定経路上でその機と交信できる可能性のある管制機関の施設に照会する

まだヘリコプターや船が出動するような段階ではなく、地上から電話やATCの通信網を使って「本当に何かあったのか」を確認するフェーズと考えると分かりやすいです。

第2段階:警戒の段階

「これは本当にまずいかもしれない」と懸念が強まる段階です。主に次のケースで移行します。

  • 第一段通信捜索を行っても情報が得られない
  • 第一段通信捜索の開始から30分が経過しても状況が判明しない
  • 着陸許可を受けた航空機が、予定時刻から5分以内に着陸せず、連絡も取れない
  • パイロットからPAN PAN(緊急通信)を受信した
  • 航空機の航行性能が悪化したが、不時着のおそれまではないと判断される
  • MAYDAY FUELの通報がある不時着の恐れまではない

なお、PAN PANとMAYDAYの緊急度の違いそのものについては、MAYDAY PANPANの違いの記事で詳しく整理しているので、あわせてご覧ください。

ここまで来ると、捜索の範囲は「その航空機が到達可能な範囲内にある関係機関」まで広げた「拡大通信捜索」に発展します。関係機関はこの時点でいつでも動けるよう待機態勢に入ります。

拡大通信捜索とは

第一段通信捜索よりも捜索範囲を広げ、その航空機が(残燃料などから計算して)到達できる可能性のある範囲内にある関係機関に対して、幅広く情報提供を呼びかける捜索です。フライトプランに記載された滞空可能時間をもとに、捜索対象のエリアが決められます。

第一段通信捜索が「予定経路上」に絞った確認だったのに対し、拡大通信捜索は「その機が飛べる可能性のある範囲全体」に網を広げるイメージです。この段階になると、警察・消防・海上保安庁などの関係機関もいつでも出動できるよう待機態勢に入ります。

第3段階:遭難の段階

最も深刻な、実際の捜索救難活動が本格始動する段階です。

  • 拡大通信捜索を行っても情報をつかめない
  • 拡大通信捜索開始後1時間経っても情報が明らかでない場合
  • 燃料が尽きたか安全に着陸するには不十分であると認められる場合
  • 航行性能が不時着の恐れがあるほど悪化した情報を得た
  • 不時着した、または不時着しようとしているとの情報を得た
  • パイロットからMAYDAY(遭難通信)を受信した
  • MAYDAY FUELの通報があり燃料が枯渇または安全に着陸できない場合

この段階に至ると、警察庁・消防庁・海上保安庁・防衛省など関係機関が連携し、本格的な捜索救難活動が実施されます。ヘリコプターや巡視船が現場に向かうのは、この最終段階です。

なぜ「フライトプランを閉じる」ことが重要なのか

ここまで読むと、パイロットにとって当たり前のようでいて実は重要な習慣が見えてきます。それは、飛行計画(フライトプラン)を提出したら、必ず到着後にクローズするということです。

着陸後にクローズ通報を怠ると、実際には無事に飛行を終えているにもかかわらず、予定到着時刻から30分後には自動的に「不確実の段階」が発動してしまいます。関係機関に無用な確認作業の負荷をかけてしまうだけでなく、本当に困っている別の航空機の捜索対応に影響が出る可能性すらあります。

参考資料

AIM 表7-14
参考資料1(定期航空協会 航空保安業務処理規程 抜粋 – 不確実・警戒・遭難の措置基準)

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