この章は、自家用、事業用操縦士の試験でよく聞かれる(と思う)航空保安施設の概要をまとめました。詳しくは今後の記事で紹介します。
VOR、ILS、DME…。訓練を始めると次々に出てくるこれらの施設、すべて「航空保安施設」という大きなくくりの中の「航空保安無線施設」に分類されます。
航空保安施設の定義
航空法第2条第5項
⇒電波、灯光、色彩または形象により航空機の航行の援助するための施設で国土交通省で定めるものをいう
航空法施行規則第1条
⇒第一条 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号。以下「法」という。)第二条第五項の規定による航空保安施設は、次のとおりとする。
一 航空保安無線施設 電波により航空機の航行を援助するための施設
二 航空灯火 灯光により航空機の航行を援助するための施設
三 昼間障害標識 昼間において航行する航空機に対し、色彩又は形象により航行の障害となる物件の存在を認識させるための施設
電波なら航空保安無線施設、灯光なら航空灯火、色彩・形象なら昼間障害標識という整理です。
「電波・灯光・色彩・形象」というキーワードは条文そのままなので、このまま覚えてしまいましょう。
航空保安無線施設について
航空保安施設のなかで電波をつかって航行の援助をするものを航空保安無線施設といいます。
航空保安無線施設(航空法施行規則97条)には6つの施設があります。
- NDB(Non-Directional Radio Beacon/無指向性無線標識施設)
- VOR(Very High Frequency Omni-directional radio range/超短波全方向式無線標識施設)
- TACAN(Tactical Air Navigation)
- ILS(Instrument Landing System/計器着陸用施設)
- DME(Distance Measuring Equipment)
NDB・VOR・タカン・ILS・DMEの5つに加えて、衛星航法補助施設を含めた6種類です。
①NDB(無指向性無線標識施設)
ADF(自動方向探知機)を搭載している航空機に対して、NDB局への方位を示す施設です。中波を使う古くからある施設で、電波特性上、誤差が多いのが特徴です。
NDBの誤差として口述で問われるのは次の4つです。
- 信号誤差
- 夜間誤差(夜間に電離層反射の影響を受ける)
- 地形誤差(山岳や海岸線で電波が曲がる)
- 静電気誤差(雷などの静電気の影響をもろに受ける)
②VOR(超短波全方向式無線標識施設)
VHFの無指向性電波と指向性電波の時間差(位相差)から磁方位を得る施設です。イメージとしては、まず無指向性の基準電波が全方位に出て、同時に指向性の電波が回転しながら出ており、この2つの受信差で「自機が局からどの方位にいるか」が分かります。
精度は非常に高く計器飛行で重宝されますが、欠点もあります。
- 見通し線内でしか受信できない(到達距離の目安:1.23×√H(ft)nm)
- 局の直上では正しくコースを示さない → 直上通過時はHDG維持で対応
- 局から遠くなるほど感度が低下する
また、識別符号の末尾で施設の種類が分かります。
VOR単独なら末尾O、VOR/DMEなら末尾E(例:SDE)、VORTACなら末尾C(例:GTC)です。
③タカン(TACAN)
軍用の施設で、機上のDME装置でTACAN局からの距離を得ることができます。識別符号は3文字で末尾T(例:MXT 松島タカン)。
なおVORTACは、VORの方位情報とTACANの方位・距離情報を提供する施設です。民間機がVOR/DME装備で飛ぶ場合でも、VORの方位とTACANの距離情報が利用できます。
④ILS(計器着陸用施設)
計器着陸用の施設で、LOC(ローカライザー)とGS(グライドスロープ)で構成されます。
- LOC:滑走路の延長線に対する横方向のズレを提供(滑走路進入端で左右幅が700ftになるよう設計)
- GS:進入角に対する縦方向のズレを提供
マーカービーコンの代わりにDMEの距離情報がOM、MM相当として代用されることも多いです。また、CAT Ⅱ/Ⅲ ILSでは電波障害を避けるため、ILSクリティカルゾーンが設定されます。
ILSと最低気象条件の関係はこちらの記事で詳しく解説しています。
着陸の最低気象条件(Landing minima)徹底解説
⑤DME(距離測定装置)
航空機から地上局までのスラントレンジ(斜め距離)を測る施設です。作動原理は、航空機側から地上局に質問電波を送り、地上局が応答電波を返す。この往復の時間差で距離を測定しています。
斜め距離を測っているため、地上局の直上では距離ではなく高度を示すことになります(6,000ft ≒ 1nm)。
「航空機が質問して地上局が応答する」というDMEの仕組みは、ATCトランスポンダーと質問・応答の向きがちょうど逆です。この違いはこちらの記事で徹底解説しています。
PSRとSSR、DMEとトランスポンダ 徹底解説
⑥衛星航法補助施設(SBAS)
静止衛星を使ってGPSを補強する航法システムです。GPS単独では航法に必要な正確性を十分に満たせないため、静止衛星・地上監視局・アップリンクシステム(アンテナ)を使ってGPSの信号を補強しています。
- GPSの利点:地上の航空保安無線施設が利用できない場所(山奥や洋上など)でも利用可能
- GPSの欠点:単独では精度、利用可能性、継続性が保証されない → だからSBASで補強する
航空灯火について
灯光によって航空機の航行の援助をする施設のことを航空灯火といいます。
航空法施行規則第114条
- 航空灯台⇒夜間や視界不良時の航行を援助する。航空路灯台、地標航空灯台、危険航空灯台
- 飛行場灯火⇒離着陸を援助する施設。飛行場灯台、誘導路灯、滑走路灯など
- 航空障害灯⇒高い建造物の存在を知らせる。高光度航空障害灯、中光度白色航空障害灯、中光度赤色航空障害灯、低光度航空障害灯
航空灯火と着陸ミニマの関係はこちらの記事もどうぞ。
昼間障害標識について
色彩または形象によって、昼間に航行する航空機へ「ここに障害物がありますよ」と認識させるための施設です。鉄塔やクレーンに塗られている赤(オレンジ)と白の縞模様の塗装や、送電線に付いている球形の標示物などがこれにあたります。

こういうやつも昼間障害標識の一部です。



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