PSRとSSR、DMEとトランスポンダ 徹底解説

事業用操縦士

PSRとは?SSRとは?

PSR(Primary Surveillance Radar:一次監視レーダー)

地上のレーダーから電波を発射し、機体表面で跳ね返ってきた反射波を受信するだけのレーダーです。

  • 航空機側に装置は不要(電源が落ちた機体でも映る)
  • 得られるのは距離と方位のみ(高度や便名はわからない)
  • 雨雲などのエコーも映り込む

気象レーダー、PAR(精密進入レーダー)

SSR(Secondary Surveillance Radar:二次監視レーダー)

地上から質問電波を発射し、航空機に搭載されたトランスポンダーが応答電波を送り返す方式のレーダーです。応答には識別コード(スコーク)や気圧高度が含まれるため、管制官のレーダー画面に「どの機体が・どの高度にいるか」まで表示されます。

航空機は、SSR装置から発する質問電波を受信すると、機上のATCトランスポンダー(航空交通管制用自動応答装置)から各機に固有の応答信号を発射し、地上のレーダー表示画面上に航空機の識別、高度並びに緊急事態の発生等を表示します。 ——東芝電波テクノロジー「航空保安システム」より

ORSR(洋上航空路監視レーダー)、TCAS、マルチラテレーション(MLAT)

PSRとSSRの違い

  • PSR:地上から電波を出して、跳ね返ってくる反射波を受信するだけ
  • SSR:地上から質問電波を出し、航空機(トランスポンダー)が高度・スコークなどの応答電波を送り返すもの

航空路監視レーダー(ARSR)や空港監視レーダー(ASR)は、PSRとSSRを組み合わせて運用されています。

DMEとは?

DME(Distance Measuring Equipment:距離測定装置)は、航空機から地上局までの距離を測る航空保安無線施設です。

作動原理

  1. 航空機側の機上装置(インタロゲータ)が地上局へ質問電波を送る
  2. 地上局応答電波を返す
  3. 質問→応答の時間差(電波の伝搬速度は一定)から距離を算出する

測っているのは「斜距離(slant range)」

DMEが示すのは水平距離ではなく、機体と地上局を直線で結んだ斜め距離です。そのため地上局の直上では距離がゼロにならず、自機の高度を示します(高度6,000ft≒1nm)。局の近くを飛ぶときほど誤差が大きくなるということです。

周波数帯はUHF

DMEはUHF帯(960〜1,215MHz)を使用します。電波法上も次のように定義されています。

「航空用DME」とは、960MHzから1,215MHzまでの周波数の電波を使用し、航空機において、当該航空機から地表の定点までの見通し距離を測定するための無線航行業務を行う設備 ——電波法施行規則 第2条第1項第51号の2

DMEの距離測定部は軍用のTACANと技術基準が共通のため、VORTACの距離情報をDMEで受け取ることができます。

トランスポンダーとは?

トランスポンダー(XPDR/トラポン)は、「航空交通管制用自動応答装置」と呼ばれる機上装備品です。

作動原理(DMEと逆)

  1. 地上局(SSR)が質問電波を送る
  2. 航空機側のトランスポンダーが、スコーク(識別コード)や気圧高度を含む応答電波を送り返す

モードの種類

モード送信する情報
モードA識別コード(スコーク)
モードC識別コード+気圧高度
モードS識別コード+気圧高度+航空機識別など(個別アドレスで質問に応答)

TCAS(航空機衝突防止装置)はこのモードSの質問・応答を利用して周囲の航空機の距離・方位・高度を把握しています。つまり自機のトランスポンダーが故障すると、他機のTCASに自機が映らなくなるという重大な影響があります。

覚えておきたいスコーク

コード意味
1200VFR(10,000ft未満)
1400VFR(10,000ft以上)
7500ハイジャック
7600通信機故障
7700緊急事態

トランスポンダーを利用した機能

TCAS

地上局の代わりに「自機」がモードSの質問電波を出し、他機のトランスポンダーの応答から距離・方位・高度を計算する。

マルチラテレーション(MLAT)

大きな空港でより正確に航空機の位置を示すものです。トランスポンダーの応答信号を空港内の複数の受信局で受信し、到達時間差で位置を出す仕組み。だから導入空港では地上でもXPDRをOFFにしない


5. DMEとトランスポンダーの違い

どちらも「質問→応答」で動くため混同しがちですが、矢印の向きで覚えましょう。

  • DME:航空機 →(質問)→ 地上局 →(応答)→ 航空機
    • 距離を知りたいのはパイロット。航法のための施設(航空保安無線施設)。
  • トランスポンダー:地上局(SSR) →(質問)→ 航空機 →(応答)→ 地上局
    • 位置・高度・識別を知りたいのは管制官。監視のための機上装備品。

DME:航空機から質問信号を出し、地上局が応答信号を返す(その時間差で距離を測る)

トランスポンダー:地上局から質問電波が出て、航空機側が高度・スコーク等の応答信号を送り返す(PSR・SSRと組み合わせて使われる)

航空法での記載

DME、トランスポンダーの航空法での記載についてみて行きましょう

DME(航空法第2条第5項・施行規則第1条、第97条)

航空法 第2条第5項

この法律において「航空保安施設」とは、電波、灯光、色彩又は形象により航空機の航行を援助するための施設で、国土交通省令で定めるものをいう。

航空法施行規則 第1条

航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号。以下「法」という。)第二条第五項の規定による航空保安施設は、次のとおりとする。
一 航空保安無線施設 電波により航空機の航行を援助するための施設
二 航空灯火 灯光により航空機の航行を援助するための施設
三 昼間障害標識 昼間において航行する航空機に対し、色彩又は形象により航行の障害となる物件の存在を認識させるための施設

航空法施行規則 第97条 

第一条第一号に掲げる航空保安無線施設の種類は、次のとおりとする。
一 NDB(無指向性無線標識施設をいう。以下同じ。)
二 VOR(超短波全方向式無線標識施設をいう。以下同じ。)
三 タカン
四 ILS(計器着陸用施設をいう。以下同じ。)
五 DME(距離測定装置をいう。以下同じ。)
六 衛星航法補助施設

DMEは、この「航空保安無線施設」のひとつ。

トランスポンダー=航行の安全を確保するための装置(航空法第60条・施行規則第146条)

航空法 第60条(航空機の航行の安全を確保するための装置)

国土交通省令で定める航空機には、国土交通省令で定めるところにより航空機の姿勢、高度、位置又は針路を測定するための装置無線電話その他の航空機の航行の安全を確保するために必要な装置装備しなければ、これを航空の用に供してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

この第60条を受けた航空法施行規則第146条が、装備すべき装置を具体的に定めています。

  • 第146条第1号:無線電話……管制区・管制圏・情報圏・民間訓練試験空域を飛行する場合に装備(いわゆる「義務無線機」)
  • 第146条第2号:航空交通管制用自動応答装置(トランスポンダー)……管制区又は管制圏のうち国土交通大臣が告示で指定する空域を飛行する場合に装備

トランスポンダーの装備が必要な空域

では「告示で指定する空域」とはどこか。昭和51年運輸省告示第200号

管制区又は管制圏のうち航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)第百四十六条第二号に掲げる航空交通管制用自動応答装置を装備して飛行しなければならない空域は、次の各号に掲げる飛行の方式の区分に応じ当該各号に掲げる空域とする。

一 計器飛行方式 次に掲げる空域
イ 航空交通管制区、航空交通管制圏等の指定に関する告示(昭和三十七年運輸省告示第百四十号)2の表に規定する航空交通管制圏(旭川管制圏、大雪管制圏、十勝管制圏、霞目管制圏、富山管制圏、相馬原管制圏、霞ヶ浦管制圏、舞鶴管制圏及び静浜管制圏を除く。)及び進入管制区を指定する告示(昭和五十年運輸省告示第四百六十四号)の表に規定する進入管制区(ロに掲げる空域を除く。)
ロ 航空交通管制区、航空交通管制圏等の指定に関する告示(昭和三十七年運輸省告示第百四十号)1に規定する航空交通管制区のうち、高度三千五十メートル以上のもの

二 有視界飛行方式 次に掲げる空域
イ 航空交通管制区又は航空交通管制圏のうち計器飛行方式により飛行しなければならない空域を指定する告示(昭和三十八年運輸省告示第三百三十八号)別表第一及び別表第三に規定する特別管制区(ロに掲げる空域を除く。)
ロ 前号ロに掲げる空域

読み替えると、こうなります

飛行方式トランスポンダーが必要な空域
VFR①特別管制区 
②管制区のうち高度10,000ft(3,050m)以上
IFR①②に加えて 
③管制圏(告示に列挙された一部の管制圏を除く)+進入管制区

AIC「VFR機の接近防止」ではトランスポンダー装備機は飛行中常時作動させることが要請されており、実運用では搭載機は常にONが基本です。

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